ファーシムは前回と同じように何か別の真実を見据えているようだ。
「素晴らしいあなた方の任務のため、あなた方にふさわしい素晴らしい名前が必要ですね。
私はあなた方を“タスクフォース・カサノバ(Xanova)”と呼ぶことにしましょう」
かくてここに、Shadow Shardを巡るヒーロー達の最後の戦いがその幕を上げたのだった。
ファーシムの指示に従い次々とルラルーの拠点を潰していくヒーロー達。前回のタスクフォース・トリスメギストスのメンバーのうち、ダメージソースを担当し
ていたAlphinとLinzyのNOVA2人娘、そして刀スクラッパーのCirthに替わってInv TankerのRed
ShoulderにYatu & Midday
Dancerのスクラッパー2人組が加わったタスクフォース・カサノバは、殲滅力こそ落ちたものの安定性を増した組み合わせである。
難なく2拠点を攻め落とし、3つの目のルラルーの洞窟深くに足を踏み入れたとき、タスクフォースのヒーロー達の耳に、助けを求める声が入ってきた。
「降服する、Cutie Lala!だからここから俺を連れ出してくれ!(I surrender Cutie Lala! Just get me
out of here!)」
見ればなんとネメシスの兵士がルラルーに取り囲まれ助けを求めているではないか。
いくら悪党とはいえ、助けを求めている人間を見捨てるわけにはいかない。ほどなくして助け出されたネメシスの兵士はヒーロー達に問われるまま、彼が囚われた理由を話し始めたのだった。
「俺たちはネメシス卿のためにある遠大な計画を進めていた。それは宙に浮かぶ要塞にいる狂った神のようなものを制御しようというものだった。だがその時、突然シスターサイキとマライスによく似た奴らがやってきたんだ」
「シスターサイキとマライスですって!?そんな馬鹿な!」
「奴らは自らをプラトリアンズと名乗っていた。そして俺たちをある種のサイキックで操り、あろうことか、我が主ネメシス卿やルラルーと戦わせたんだ。もう俺は戦いたくない。素直に刑務所に行くよ」
プラトリアンズとは最近Paragon Cityに出現した異次元の悪のヒーロー達のことだ。しかし一体彼らは何の目的でこの次元に現れ、ネメシスやルラルーを使って何をしようとしているのだろうか。
「ネメシス軍とプラトリアンズと呼ばれる2つの力は、おそらく“嵐の宮殿(Storm Palace)の主人の力を支配しようとしているのでしょう。まず私たちは彼らの脅威に対応しなければなりません。」
戻ってきたヒーロー達にファーシムが言った。
「でも例えそうだとして、プラトリアンズは、ネメシスの兵士をコントロールして何をさせようとしたのかしら?」そうつぶやいたLalaにファーシムが答える。
「どうやらマライスとマザーマイヘムと呼ばれるプラトリアンズはネメシスの兵士を使って“嵐の宮殿”の7つの鍵のうち2つを解除しようとしているようです。7つの鍵を得れば彼らは“嵐の宮殿”に自由に立ち入ることが出来ます。私たちはそれを阻止しなければなりません」
そのことでプレトリアンズが何を企んでいるのかはわからなかったが、Circle of Thornsがファーシムに試みたのと同様に、これらの神がもつ巨大な力を彼らの野望のために使おうとしているのは間違いなかった。
「それはわかったけど、具体的に一体どうしたらいいの」
「怒りの岩という浮島でマライスが最初の鍵を解除しようとしています。まず皆さんは彼らの操っている兵士の呪縛を解き、鍵を出現させるために必要な4つのキーストーンを同時に活性化しなければなりません」
そうだ。ヒーロー達は、プラトリアンズやネメシスより早く7つの鍵を手に入れ、“嵐の宮殿”へのたどり着かなければならないのだ。
“嵐の宮殿”の鍵が眠る怒りの岩の洞窟。
そこに一歩足を踏み入れたタスクフォースが見たものはマライスによって操られたネメシス軍の大部隊の姿だった。
「マ、マライス卿のために?・・・って何か変なような気が(For・・・Lord Malaise? That’s doesn’t sound right・・・)」
操られているのをわかっているのかいないのか、ともあれ行く手をさえぎるネメシスの軍勢を次々と退けたヒーロー達の前に、プラトリアンズの一人マライスがその姿を現した。
「マザーマイヘム様のため、失敗するわけにはいかんのだ。マザーマイヘム様はお前たち全員の死をお望みだ(I mustn’t fail Motermyhem.
She wanted you dead with all of heart her)」
彼マライスは、紛れもなく我々の世界のマライス(ブリックスタウンのトレーナー)に他ならなかった。
ただひとつ違ったのは彼が異次元世界におけ るシスターサイキ、マザーマイヘムによって正義ではなく、狂気と悪の世界へとその精神を固定され、更に自ら他人を狂気に追い込む術を身に着けてしまった異次元の悪のヒーローであるということだった。
悪のヒーローとは言え、彼は我々の世界のマライスと鏡のように等しく実力をもったアーチヴィランである。
それゆえ戦いはさすがに激戦となったが、さしものマライスも最上位の実力を持つ7人ものヒーローを相手にすることはできなかった。最後の凱歌はやはりタスクフォース・カサノバにあがったのだった。
4つのキーストーンに同時に手をかざすと、石の表面がみるみる渦巻き、まもなく渦はLalaの目の前でひとつの鍵に結実したのだった。
鍵の表面には古代Shadow Shardの文字で詩の一節のようなものが刻まれているのが見えた。
それは次のような意味であるようだったが、Lalaにはその文字はただの詩ではなく、この鍵に何かの怒りが封じ込まれたもののようであるように感じられた。
“彼の者宙に上りて”
“彼の者自ら大きな宮殿を作れり”
“彼の者自らが嵐と共にあり”
“ララルーの心は怒りをもって曇りたり”
“親切なるもの、”嵐の宮殿“に入りて警告を与えり”
“親切なるもの、ラナルーは制御せしことを改めて断言せりと言えり”
“親切なるもの、そのとき恐れて退けり”
“ラナルーが彼らの主人を止める方法を見出したゆえに
「貴方たちの活躍で2つの鍵を取り返し、ひとまずプラトリアンズの脅威は去りました。しかしネメシスの脅威はいまだに続いています。彼らは苦痛の鍵と憎しみの鍵の2つを獲得しようと動いています。」
2人のアーチヴィランを破り凱旋したタスクフォースを待っていたのは、本当のネメシス軍もまた鍵の奪取をもくろんでいるという知らせだった。
まずヒーロー達は苦痛の鍵が眠る洞窟に急行したが、今度は大きな抵抗はなくなんなく鍵の確保に成功した。
そして3つ目の鍵にも同じく古代の詩が浮かび上がったのだった。
“彼の者の謀によって憎しみの熱は燃え上がれり”
“狂えるもの、怒りのあまりその心を壊せれり”
“ラナルー、ルラルーが彼から退きしと感じたり”
“彼の狂気があまりに増加せしを恐れるがゆえに”
手の中の鍵から、Lalaはこの鍵に苦悶ゆえの苦痛が封じられていることを感じたのだった。
そして迎えた4つ目の洞窟で、再びヒーロー達は驚かされることになった。
今度は彼らを迎えたのはネメシス軍だけではなかった。そこでネメシスと共に彼らを迎えたのは巨大な刃と光線銃をもつ異形のエイリアン、すなわちRiktiの姿だったのだ。
「もう、一体全体何なのよ。“狂えるもの”の力ってそんなにみんな欲しがるほどすごいものだっていうの?」半ばあきれたようにつぶやいたLalaだったが、驚きはそれだけではなかった。
今度は洞窟の奥深くから、タスクフォースを迎えるがごとくある種の威厳をもつ声が聞こえてきたのだ。
「貴様らはここで敗北するであろう、タスクフォース・カサノバ。何者もこのネメシスの力を打ち倒すことなど、できはしないのだ!(You shall
fall here, Taskforce Xanova. Nothing can beat the power of Nemesis.)
「嘘っ!ま、まさかあれって・・・・ネメシス本人じゃないの!?」
長い激闘の末倒した機械人間は果たして本当にネメシス(Nemesis?)だったのだろうか?
その答えは多分誰にもわからないだろう。
なんとなれば彼は大勢の影武者をもっており、当の本人以外、ネメシス軍自身でさえも誰が本当のネメシスだとわからないといわれているのだから。
しかし唯一確かなことがある。それはタスクフォース・カサノバがネメシスを退け、憎しみを封じ込めた4つ目の鍵をその手中に収めたということだけなのだ。
かくて4つめの鍵も他の鍵と同じように文様を描いて古代の詩をその表層に刻むと、Lalaの手の中にしっかりと握られたのだった。
“ラナルー、ルラルーが迷ええりと感じたり”
“ラナルー、彼の怒りが増長するを感じたり”
“ラナルーは彼の者の復活を許しはしない”
“ルラルーへの隷属が彼の者の人生にあらずるものゆえに”
ほとんど自棄という感じだが、やはりその勘は正しかった。
ヒーロー達はRiktiだけでなく破壊の鍵の洞窟で今度はマルタの工作員に遭遇したのだ。
「命令する。メタヒューマンを確認した。直ちに拘束せよ」暗がりにこの部隊の指揮官と思しきBerfry Green3-2-3の声が響いた。
最終的に3つ巴の戦いを制止たのはやはりヒーロー達だった。
だが戦術的な勝利は必ずしも戦略的な勝利とはイコールとは限らない。どうやらこの点では海千山千のスパイ組織であるマルタに分があったようだ。
なんとなればヒーロー達が足止めされている間に、脱出を図った工作員, Berfry Green2-2-1の声がヒーロー達に聞こえてきたのだから。
「鍵は持ち出した!作戦は成功したぞ!(The Key is away! This operation has been a success!)」
「やられたわ。結局破壊の鍵はマルタの手に落ち、手に入れられたのは復讐の鍵だけか」
まんまとしてやられてがっくりと肩を落とした彼女は、一つ手に残った復讐の鍵の詩に目を移した。
再び謎の詩が鍵の表面に浮びあがる。
“ラナルーは彼の主人のため奴隷の如く働けり”
“激怒せし彼は死刑執行人として働けり”
“なれど日がたつにつれ、彼の狂気は更に高まれり”
“そのプライドゆえ、奴隷のままでいることに彼の者が耐え切れなかったゆえに”
「しかしファーシムの詩といい、今回の詩といい、彼らって本当にルラルーの神様なのかなあ。
なんか逆にルラルーに使われてるような気もするんだけど」
強きルラダック、親切なるファーシム、狂えるラナルー、彼らは兄弟だといい、そして彼ら自身ルラルーだという。この3人のShadow Shardの伝説に登場する神のごとき存在は本当は一体何者だというのだろうか。
「今のところ5つの鍵が私たち、そしてマルタが1つね。ということはあと一つ鍵があるはずだけど」
そういうLalaにファーシムが少し声を落として答えた。
「残念ながら残り2つの鍵は既にあなた方の世界に持ち去られたように感じます。
そして残り一つ、狂気の鍵の位置はもはや私には知る方法がありません。」
「そんな、何か方法はないの?」
「私は夢を通じて貴方の世界のアズリアという名の魔術師にメッセージを送りました。彼女なら魔術によってその在り処を知ることが出来るかもしれません。ともかく今はマルタに持ち去られた鍵を取り戻すことが先決です。もし鍵が彼らの手元に残ったままなら、予期せぬ災難が起こることになるかもしれません」
その言葉にまずマルタを追って、Paragon Cityに戻ったタスクフォース。
だが今回はまだ彼らに運があった。まもなShadow Shardから逃走したマルタの工作員の行く先はFounders' Fallsにある研究所だと判明したのだ。
「我々姉妹の名誉にかけて、タスクフォース・カサノバを殲滅するのだ。貴様らに我々アルテミスのナイフに抗う術はない!(We must
destroy Taskforce Xanova for our sisters honor. You have no chance
against the knives of Altemis.)」
破壊の鍵を追ってマルタの秘密研究所に潜入したヒーロー達を待ち構えていたのは、マルタ機関の女性工作員アルテミスのナイフの一団であった。なんなく彼女たちを排除し、更に奥へと進むタスクフォースの前には多数のマルタ工作員やタイタンロボットが次々と姿を現し、ヒーローの行く手阻もうと試みた。
この警備状況から見て破壊の鍵はまだ この研究所にあるに違いあるまい。
「あれ?あの白衣の学者らしき人、ポータル社の研究員じゃないの?」
見ればポータル・コーポレーションの科学者と思しき人物が、マルタの工作員となにやら熱心に話しこんでいるではないか。
だが、ヒーロー達は一瞬その科学者 の目が怪しく緑色に光るのを見落とさなかった。
ポータル社の科学者と見えたその男、フォレスター博士(Dr. Forester)は実はCircle of Thornsのメンバーだったのだ。
Circle of Thornsは実に数世紀にもわたって彼らの宿敵、古代魔法王国ムーの復活を防ぐ方法を研究してきた(詳しくはStory Arc「地獄からの使者Envoy of Shadow」参照)。
そして最近有力な方法としてポータル社の研究に目をつけ、その科学者に地獄の悪魔の血を注ぎ込んでCircle of Thornsの魔術師に仕立て上げていたのだ。
「Circle of Thornsの奴ら、ファーシムで失敗したんで、今度はマルタをそそのかしてラナルーを生贄に儀式をしようっていうのかしら。それにしてもなんて懲りない奴らなの。」
マルタもろともCircle of Thorns扮するフォレスター博士も片付けたタスクフォース。
その手の中には一度は取り逃がした破壊への衝動がこめられた鍵がしっかりと握られていた。
鍵の表面には再び古代の詩が浮かび上がる
“ラナルー、再び宙に昇りて”
“ラナルー、狂いて世界を破壊せり”
“ルラルー、ただ力なき怒りをもって激怒せり”
“ラナルー、それぞれの失敗せし攻撃によってその力を得たるがゆえに”
しかし倒される直前フォレスター博士はヒーローたちに向かって勝ち誇ったように言い放った。
「貴様はこの肉体を破壊するだろう。だがCircle of Thorns は最後のキーストーンを手中に収めているのだよ!(You may
destroy this body, but know that the Circle of Thorns already posses
the last keystones!)」
アズリアの突き止めたオランベガの一角へと向かうヒーローだったが、そこで狂気の鍵を見つけることは出来なかった。
既にCircle of Thornsはオランベガから狂気の鍵を持ち出し、恐るべき儀式を執り行おうとしていたのだ。
アズリアが霊視したところによるとどうやら彼らは狂気の鍵の力を媒介に、我々の地球に恐ろしい恐怖を招き寄せようとしているという。それがラナルーの力の ことなのかあるいは別のものなのかはわからないが、もし彼らが儀式を成功させればそれは世界の破滅をもたらすかもしれないというのだ。
「私は彼らを封じ込めるため、周辺にエマージェンシーフォースフィールドを展開させました。しかしその儀式を阻止するためには彼らが召還した恐るべき悪霊バフォメット(Baphomet)を倒さなければならないでしょう」
アズリアが心配そうな顔をしながら言った。
彼女の話によるとバフォメットは地獄のベヒモスの中でももっとも古い家柄であり、ベヒモスの君主達の中で最も恐れられている存在だというのだ。
アズリアが張り巡らした強力なフォースフィールドに囲まれた市郊外の公園墓地。
そこがCircle of Thornsが目論む儀式が行われる場所だった。
そして今にも悪魔の儀式に掛かろうとするおびただしい魔術師を見下ろすがごとくそびえる小高い丘の上の古い崩れかけた教会に、巨大なベヒモスの姿が見えた。
あれこそが地獄のベヒモスを統べる者、ボフォメットに違いない。
深夜に浮かんだ月の光が、ヒーローとCircle of Thorns、そしてこの地獄の君主とを青白く照らし出した。
月夜の戦いは激戦となったが、ヒーロー達の最後の一撃がバフォメットを捕らえると、この恐るべき地獄の君主を取り巻く巨大な炎が一瞬大きく吹き上げ、次の瞬間大地に伏したその巨躯を形作るように地を焦がし消えた。
それは地獄の君主の最後であると同時にルナルーへの最後の鍵がヒーロー達の手に握られた瞬間でもあったのだった。
そして狂気を封じ込めた鍵は、他の鍵と同様に文様を描くと古代の詩を詠いはじめた。
”ラナルー、狂気の炎をかき立てり”
”彼の者の狂気、ラナルーに、より巨大な力を与えれり”
”ラナルー、その力によってルラルーの鉄の拳を弱めれり”
”唯一ラナルーの心の闇がゆえに”
「あなたは嵐の宮殿への道を切り開く7つの鍵の全てを手にいれました。しかし狂えるものの玉座に行く前に少しの間聞いてください。これがあなた方が集めた物語の全てなのです。」
ヒーロー達が帰還したファーシムの礼拝堂の広間に、正しい順番に並べられた古代の詩が流れた。しばらく無言のままそれを聞いていた
Lalaはハッとした。この詩こそ狂える神ラナルーがこの世界を破壊した理由を謡ったものだったのだ。
“彼の者宙に上りて”
“彼の者自ら大きな宮殿を作れり”
“彼の者自らが嵐と共にあり”
“ラナルーの心は怒りをもって曇りたり”
“ラナルー、ルラルーが迷ええりと感じたり”
“ラナルー、彼の怒りが増長するを感じたり”
“ラナルーは彼の復活を許しはしない”
“ルラルーへの隷属が彼の者の人生にあらざるものゆえに”
“ラナルー、彼の主人のため奴隷の如く働けり”
“激怒せし彼は死刑執行人として働けり”
“なれど日がたつにつれ、彼の狂気は更に高まれり”
“そのプライドゆえ、奴隷のままでいることに彼が耐え切れなかったゆえに”
“彼の者の謀によって憎しみの炎は燃え上がれり”
“狂えるもの、怒りのあまりその心を壊せれり”
“ラナルー、ルラルーが彼から退きしと感じたり”
“彼の狂気があまりに増加せしを恐れるがゆえに”
“ラナルー、狂気の炎をかき立てり”
“彼の狂気、ラナルーに、より巨大な力を与えれり”
“ラナルー、その力によってルラルーの鉄の拳を弱めれり”
“唯一ラナルーの心の闇がゆえに”
“親切なるもの、”嵐の宮殿“に入りて警告を与えり”
“親切なるもの、ルナルーは制御せしことを改めて断言せりと言えり”
“親切なるもの、そのとき恐れて退けり”
“ラナルーが彼らの主人を止める方法を見出したゆえに”
“ラナルー、再び宙に昇りて”
“ラナルー、狂いて世界を破壊せり”
“ルラルー、ただ力なき怒りをもって激怒せり”
“ラナルー、それぞれの失敗せし攻撃によってその力を得たるがゆえに”
狂える者ラナルー、様々な勢力の脅威にさらされた彼が、再び世界を破壊しようと試みることは明らかだった。今や嵐の宮殿への鍵を開け、彼の凶行を食い止めることができるのは唯一タスクフォース・カサノバだけなのだ。
ファーシムによれば、嵐の宮殿の周囲には7つの鍵に対応する7つの碑があり、そこで鍵を使用することによって嵐の宮殿の深部への道が開かれるのだという。
そこにいるはずのラナルーを倒さない限り、世界は再び破壊され、あるいはルラルーによってこの世界の全人類は皆殺しにされることだろう。
「決戦の刻が来ました。(It is time)」
ファーシムが戦場に赴こうとするヒーロー達の背に声を掛けた。
「健闘を祈ります。そして勝利があなた方のものでありますように。(Fight well, Task Force Xnovia. May victory be yours)」
嵐の宮殿・・・そう呼ばれるラナルーの居城はその名のとおり荒れ狂う嵐に囲まれていた。
常時は固く閉ざされ、何人たりと侵入者を拒絶し続けてきたその次元の扉は、ヒーロー達が7つの碑に対して鍵を使うや一瞬開いたと思うと、タスクフォースの
ヒーロー達を中へと誘ったのだった。
そして彼らが誘われた場所こそ、嵐の宮殿の深部、この宮殿の主狂えるラナルーの寝所に他ならなかったのだ。
冷たく暗い大広間に、一瞬雷鳴が轟いたかと思うと眩い雷光がこの広間にたたずむ巨大な生物の姿を照らし出した。
そして暗い闇を身にまとったその巨人の周囲を雷雲にも似た雷の精霊Tempest Elementalが取り巻き、淡い紫色の光を放っているのが見えた。
だが恐るべき神の力もこれが最後だった。
ヒーロー達の粘り強い攻撃は、徐々にこの巨大な破壊神の体力を奪っていっていたのだ。
そして長い戦いの決着は突然訪れた。雷光に映し出された巨人の影が大きく揺れたかと思うと、次の瞬間眩い光がラナルーを包みこんだのだ!
巨大な光の固まりは一瞬バーストしたかと思うと、急激に収集するように小さくなり、次元の彼方へと消失していった。そして暗闇が再び広間の支配を取り戻し たとき、そこにいたはずのルラダックの姿はなく、そこにあるのは世界を救ったヒーロー達の姿だけだったのだ。
「ラナルーは貴方たちの活躍の前に斃れました。
それは喜ばしいことですが、私は同時に悲しみを禁じ得ません。彼は気が狂っていて乱暴ものでしたが、確かに私の兄弟だったのですから」
ファーシムが世界を救った勇者たちに、その活躍をたたえつつも複雑な表情を浮かべていった。
「・・・しかし・・・・彼はやがて復活し、いつか再びその力を取り戻すことでしょう」
「え、なんですって!ラナルーは死んだはずよ!」
驚いたLalaがファーシムに問いかける。
「なぜならば彼はルラルーだからです。そして私たちも・・・・そう永遠に・・・・」